色彩トップインタビュー色彩トップインタビュー

色彩トップインタビュー

多摩平の森の病院院長、認知症疾患医療センター長であり、当協会理事の高橋龍太郎先生をヨシタミチコ理事が訪ね、お話を伺いました。

ヨシタ
高橋先生が長い間関わって来られた高齢者医療に関する研究のなかで、『高齢者による医療の選択と意思決定を支える体制の構築に関する研究』は、非常に興味深いものだと感じました。
医療者からの視点だけでなく、高齢の患者本人の医療に関する意思表示ということに踏み込んでおられますが、特に、「医師が提案する選択肢と高齢者が選ぶものとが一致しないにも関わらず、話し合いで治療、療養の方針が決まることが少ない」ということの問題意識に感銘を受けました。医療現場では、患者が自分の思いを医師に伝えることはまだまだ難しいことだと思います。まして、終末期の高齢者であれば、なおさらです。
高橋先生が提案される「ライフデザインノート」についてお話しいただけますか?

高橋
「ライフデザインノート」は、自分の終末期医療に対しての意思表示を元気なうちにしてもらおうということで作ったものです。研究の際には、あらかじめご本人の同意を得て、その意思を記入していただくという流れだったのですが、実際にはご自身で希望して研究に参加された患者さんでも、いざ自分の終末医療に関する意思決定となると躊躇される方が多いというのが結論としてわかったことでした。記入に同意していても、実際に記入された方は2~3割にとどまりました。

ヨシタ
「終活」などが、普通に話題になる時代になったと思っていましたが、それは意外な数字に思えます。

高橋
大規模なアンケート調査などでは、「延命治療をしたくない」と答える人は9割を超えることがあります。しかし、いざ自分のこととなると話が違ってくるということなのです。これは、まだまだ日本人が自分の死というものに直面することを先延ばしにしたいという心性を持っていることを示していると思います。そういう意味で、終末期医療の意思確認というのは、なかなか難しいものです。

ヨシタ
先生の研究分野には、認知症があるとお聞きしています。現在、院長をつとめていらっしゃる多摩平の森の病院では、認知症疾患療養病棟がありますが、身体拘束を一切行わないということを宣言しておられます。
周辺症状(BPSD)をともなう場合の看護は困難なことも多いと思いますが、こちらの病棟ではどのような工夫をしていらっしゃいますか?

高橋
これは、病院施設のトップがリーダーシップを発揮してその決意を持つ必要があると思っています。介護者、看護者個々人の意識として、身体拘束をなるべくしない看護をしたいと思っているだけでは弱いのです。病院の理事長、院長がこの病院では身体拘束をおこなわないのだという決意を持っている必要があると思っています。
もちろん、現場では日々の積み重ねのなかでさまざまな工夫をしています。病棟では向精神薬も使用していますが、投薬ひとつとっても、不安定で転倒しやすいという人には、薬の中身の調整、飲むタイミングや量の調整などの工夫をしています。また、ベッドから転落の危険がある人には低床ベッドやマットレスだけにするなどの工夫、また落ちたときにアラームに手が届くようなスイッチの設置なども工夫のひとつです。
スタッフの数には限界がありますし、夜間には少ないスタッフで病棟すべてを見なくてはいけないこともありますから、ここが理想郷というわけではないのです。ただ、「ご本人が嫌だと思うことは極力やらない」ということは大切にしたいと思っています。

ヨシタ
先日、当協会の関東支部長、副支部長が、病棟で色彩を使ったアクティビティを提供させていただきました。
最初は「コミュニケーションを取ること自体、難しいのではないかと感じた」と、同行したスタッフが感想を述べていましたが、みなさん「好きな色」という問いには積極的に色に手がのびたということで、最終的には、参加された全員の方がコラージュの作品を作りあげることができました。
このような活動について、どのように思われますか?

高橋
今回は、色に関心がありそうな方、また、手が比較的動かせる方を作業療法士、看護師があらかじめ選んで参加するようにしました。
色と気持ちとの関係や、機能改善については、まだまだ未知の領域ですし、研究するには年月がかかるものです。 ただ、これまでにも森林浴の効果などを計測しようという研究に携わったこともあり、五感と脳機能との関係については、研究の余地があると考えています。

ヨシタ
今後も、認知症の方に与える色彩の影響について考えていきたいと思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。