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色彩トップインタビュー

株式会社シノテスト代表取締役会長である塚田遙氏をヨシタミチコ理事が訪問し、お話を伺いました。

「検査薬に頼るのは薮医者」

「検査薬に頼るのは薮医者」と言われた時代に、シノテスト1号、シノテスト2号は誕生しました。

ヨシタ 御社の事業である臨床検査薬というのは、普段、健康診断の血液検査などで馴染みのある血糖値やコレステロール値などを検査するための試薬であるということを今回初めて知りました。このような検査薬を開発するようになった御社のはじまりをお聞かせいただけますか。

塚田 薬学博士の篠原亀之輔が発明した尿中の糖とタンパクを測る試薬を亀之輔の妻の篠原愛が昭和26年に事業化したのが会社の始まりです。二つの試薬をシノテスト1号、シノテスト2号と名付けて販売しようとしましたが、当時の医療機関には全く売れませんでした。

ヨシタ 医療のなかで、血液や尿の検査は欠かせないものになっている現状を考えると、戦後間もなくとはいえ意外な気がします。

塚田 当時の医療は、「聴診、打診、問診」を診断の基礎と考えている時代で、今から考えると科学的ではありませんでした。逆に、「そんな検査薬に頼るのは薮医者だ」と思われるような時代だったのです。しかし、GHQの命令で自衛隊の前身である警察予備隊が組織されることになり、集団検診がおこなわれることになりました。その検診のため、シノテスト20万本が使われました。

光の波長の変化や色の識別性が検査にも使われている

塚田 次に検査薬を買ってくれたのは、生命保険会社でした。保険に加入してくれるお客様の健康状態を簡単に測れるということで、採用されました。当時の検査薬はアンプルに入っていて、口を切ってそこに検体を入れると色が変化します。その色を基準の色見本と比べることで、尿中の成分を簡易に測ることができたのです。

ヨシタ 検査や試薬の世界でも「色」は、識別性という意味で、おおいに使われているのですね。

塚田 血液検査でもそうです。現在の血液検査も、ある波長の光を検体に当てて、その透過光を分析することで、血中の成分を測っています。

ヨシタ それは初めて知りました。まさに色は光の波長ですから、生化学検査と色は切っても切れない関係だったのですね。

会社の大義は「苦しんでいる患者さんを助けること」

ヨシタ 現在、ギランバレー症候群のように難病でありながら患者数の少ない希少疾患の検査にも取り組んでおられます。このような取り組みは、なかなか研究の進まない希少疾患の患者さんにとっては、とても力強く感じられると思います。あえて、このような取り組みをおこなっているのはどのような理由があるのですか。

塚田 株式会社ですから、利益を生むことが事業の目的ではあります。しかし、私としては、病気に苦しむ人がいることで収入を得ているということに、どうしても抵抗があるのです。
昔から、「薬九層倍」などと言って、薬というのは原価の9倍で売られているというように言われていますが、私どもでは、得られた利益を新しい試薬や、難病と呼ばれるような希少疾患の検査薬開発に投資しています。それは、医療に携わる者として、会社の大義は「苦しんでいる患者さんを助けること」だと考えているからです。
希少疾患の検査を事業としておこなっているのは、医療で利益を出すからには、医療にお返しをしたいという考えからです。そして、大手がやらないニッチな分野だからこそ、私どもが行う意義があるとも思っています。

真実を語らなければ科学にならない

ヨシタ 「真実を語ろう」という社是が素晴らしいですね。検査結果は常に真実でなければならないと思いますが、研究の進行具合で真実を語ることが難しいこともあるのではないかと思います。真実を語ることを社是としていらっしゃるわけをお話しいただけますか。

塚田 日本人の特性じゃないかと思うのですが、都合の悪いものはなかったことにするような文化があるように思います。今でこそ、そんなことは全くありませんが、我々の会社も初期の頃には、研究員の中に都合の悪いデータを隠そうとする者がいました。そういうとき、創業者の篠原愛は「真実を語らなければ科学にならない」と言って、戒めたそうです。その後、サイエンスに限らず、どんな内容であっても、相手が誰であっても「真実を語る」ということが社是になったのです。

ヨシタ 社是として「真実を語る」ということを掲げておられることは素晴らしいことですね。今の時代、やはり生き方に対する哲学を持っていないといけないと思います。

「患者さんのために働こう」という大義で社員の意識ががひとつになる

塚田 「我々の仕事の向こうには、常に患者さんがいる」ということを常々社員に言っています。そこが理解できれば、楽して儲けようという考えではなく、苦しんでいる人のために働こうという気持ちになれます。大義がなければ、会社というのはうまくいきません。社是を掲げていることで、苦しんでいる人のためにもうひと働きしようという意欲が生まれるのです。
このような考えが社内に浸透しているため、皆の意識が「より良いものをより早く届ける」「より正確に」ということに収斂していきます。

ヨシタ 当協会では、色を通じてすべての人がこころ豊かに暮らせるようにと考えています。塚田会長がお話しくださった「困っている人、苦しんでいる人の役に立とう」という精神が、社内のいろいろなところで花開いているのを感じます。

塚田 当社では、障がい者雇用にも力を入れています。今、全社員300人程度ですが、10名以上の障がい者の方に働いてもらっています。特に、就職先がなく困っている精神障がい、知的障がいの人たちに、袋詰めなどの作業をしてもらっているのですが、彼らはとても丁寧で良い仕事をしてくれます。単一労働などでは、長時間非常に高い集中力を発揮します。それぞれの得意なところを伸ばせば、良い仕事ができるのです。
さらに、一般社員と一緒に働くことで、障がいの状態が良くなるということも実際に起こっているので、親御さんからも、学校からもに感謝されているんですよ。
そういう人たちを活かすための仕事を社内で創るために、外注していた業務を内製化するなどの努力もしています。コストは上がりますが、やはり「困っている人のためになりたい」という精神で取り組んでいます。

「第52回グッドカンパニー大賞グランプリ」を受賞

ヨシタ 塚田会長のお話をうかがい、こんなに、苦しんでいる人、困っている人のために働こうと考えている企業があると知り、たいへんうれしく思います。
一昨年には、経営の刷新、技術開発、市場開拓、流通改革の分野において、特に顕著な成果をあげ、優れた内容を有する企業として、「第52回グッドカンパニー大賞グランプリ」を受賞されたとお聞きしました。

塚田 この受賞は社員も皆、喜びました。よく取引先の方から、「社長以下、皆さん同じ言葉で話されますね」と言われます。ラグビーの”One for all, all for one”のように、社員が一致団結して同じ目標に向かっていることが、我々の強みだと思います。

ヨシタ 本日は貴重なお話をうかがうことができました。ありがとうございました。

株式会社シノテスト