色彩トップインタビュー
ティー・オー・エス株式会社代表取締役 髙山善文氏に、ヨシタミチコ理事がお話を伺いました。
高校時代に体験したボランティア活動から社会福祉への道が始まりました
ヨシタ 介護サービスについて、施設や経営者に対するコンサルティングと、サービスを受る側の高齢者やその家族への助言の両方を提供されていらっしゃいます。
このような仕事をする出発点は、どのようなことだったのですか?
髙山 高校時代にボランティア活動と出会ったことが、大きなきっかけだったと思います。それは、障がいのある方の「旅をしたい」を叶える活動だったのですが、そのボランティア活動から、大学への進路でも社会福祉を専攻しようと思い立ちました。ですから、高校時代の体験が今につながっています。その後、民間企業や社会福祉法人のなかで仕事をしながら、さまざまな形で社会福祉や介護福祉に関わってきました。
ヨシタ 日本では平均寿命が延びていますし、高齢者人口が増えていますから、今や人口全体の平均年齢が50歳に近づこうとしていますね。
髙山 はい。現在の平均寿命は、男性81.05歳、女性87.09歳となっています。100歳以上の方は9万人を超えると言われています。人生50年と言われていた時代に比べ、30年以上も長くなっている訳です。
社会とのつながりが、
健康寿命を伸ばしていく
ヨシタ 健康寿命をいか伸ばすかが重要になってきますね。何か、健康寿命を伸ばす秘訣はありますか。
髙山 健康寿命を伸ばす重要なポイントの1つに、「社会とのつながりが」があります。これは、既にエビデンスもあるのです。しかし、男性にとっては意外に難しいことと思います。私の場合も、妻を見ているとちょっと買い物に行っては近所の方とおしゃべりしたりなど、地域のコミュニティとのつながりがありますが、私自身はというと、隣の人とは挨拶程度で、ほとんどつながりらしいことがありません。そういう意味では、危機感を感じます。(笑)
ヨシタ 協会の事務局がある地域でも、今年になって夏祭りを再開したりしています。そういうことに参加していくなど、地域とのつながりを作ることが大切なんですね。
髙山 そうですね。ただ、私自身も含めてですが、生まれ育った地域ではなく、大人になってから移り住んだような場所だと、なかなか、どうやって地域の活動に参加したらいいのかわからないといった問題があります。また、会社や職場での序列とは関係ない人間関係のなかに放り込まれて、戸惑うケースも多いのではないかと思います。しかし、孤独でいることは、生きる意欲を減退させてしまうのです。ですから、やはり、なんらかの形で社会とつながっていくことを考える必要があると思います。
介護サービスを選ぶ際には
費用と質が大切
ヨシタ 超高齢社会となった日本では、多くの人が高齢者施設や介護サービスを何らかの形で利用するのではないかと思います。施設を選ぶ際のポイントを教えていただけますか。
髙山 大きく2点あると思います。1つは経済的な点です。介護には「いつまで」という終わりが見えないのです。
ですから、ずっと負担が可能であるかどうかについては、よく検討しなければなりません。また、入ってみたら追加負担があったという場合なども起こり得るので、よくよく調べて、費用が負担し続けられるのかを考える必要があります。
もう1つは、「人」の問題です。これは、スタッフや経営者のことですが、その質が非常に大切です。大手の株式会社が運営する施設では、経営者と直接会うようなことはないかもしれませんが、小さな法人などでは、「顔の見える経営者」がいる場合もあります。どういう人が、どういう方針で経営しているかが見えることが、とても大事なことだと思います。
高齢者施設も画一的なサービスから
個別のケアになっていけたら
ヨシタ これまでに、数多くの介護施設をご覧になっていると思いますが、これからの高齢者施設に必要なことは何だと思われますか。また、これから必要になってくるサービスとはどのようなものでしょうか。
髙山 とても難しい質問ですが、答えをひとつにまとめるとすると、「その人、その人に合ったサービス」ということができるのではないでしょうか。
例えば、あるデイサービスでは、朝は必ず美空ひばりのカラオケから始まるというものがあります。でも、人によっては、違った音楽が聴きたい、歌いたい人もいるでしょう。
しかし、現状のサービスでは、「高齢者はこういうもの」という形で、決まりきったことをするだけになってしまっていることも多いのです。ですから、なるべく個々の希望が叶うような個別のケアができるようになるのが理想です。ただ、個別のケアをするためには、お金の面とか、人手が足りないなどの問題もあって、ひとつの施設だけで変えていくのは難しい面もあります。
高齢者介護の人材が
圧倒的に足りません
ヨシタ 介護の現場での人材不足も問題になっています。
髙山 今は、需要と供給のバランスが悪い状態です。どんどん高齢者は増えるのに、ケアする人が少ないのです。若者が介護のような職種に就いてくれないという現状もあります。また、施設によっては介護職員の社会保険や残業手当支給などの労働環境が整っていない現場もあったりするのも、問題だと思います。国として、介護従事者の給料を上げるような方策を採ればいいのですが、そうなっていません。今の給与水準で来てくれる人に来てもらうというだけなので、なかなか人が集まらないのです。
ヨシタ そうなると外国人労働者に頼るような構図になってしまいますね。
髙山 インドネシア、フィリピン、ベトナムなどから外国人の方が来ています。現在、仕事として、外国人介護職員と日本の施設を結びつけたり、研修を行うような活動もしているのですが、そういうなかで難しいのは、日本でいう「介護」の定義や概念を理解してもらうことです。生活習慣や文化が異なる国の人にそこを共有してもらうことで、より良い方向に行くと思います。
色彩福祉士や色彩福祉アドバイザーの
の活躍の場を創り出すことは十分可能です
ヨシタ 当協会で資格を取った方から、「どんなふうに活動していいかわからない」という声を聞くことがあるのですが、高齢者施設などで活動するためのヒントをいただけないでしょうか。
髙山 私が関わっている老人ホームの話ですが、そこではたくさんのレクリエーションプログラムがあったので、「これはどうやって導入を決めているの?」と尋ねたことがあります。すると、「売り込みに来たところを入れている」という答えが返ってきました。ですから、資格者のみなさんも、ぜひ臆せずに施設に直接当たるといいと思います。
また、各都道府県にある社会福祉協議会にボランティアとして登録してみるというのも、ひとつの方法です。最初はボランティアとして活動を始めていくことも、検討する価値はあると思います。
海外の介護現場での問題に
日本の経験を役立てたい
ヨシタ 人生100年と言われますが、これからやってみたいことはありますか。
髙山 私は、日本の介護経験を海外の人に提供することをしていきたいと思っています。海外の介護現場での問題に対して、「日本ではこんな解決策があるよ」というのを教えてあげたいのです。国際交流をベースに私が培った30年ほどの経験を活かしていきたいと思っています。
ヨシタ 今日は興味深いお話をありがとうございました。